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ジャーナリズムへのエールとなった「スポットライト」

2016年4月17日
PPC EYES




一ヶ月以上ご無沙汰の映画館に続けて通い、アカデミー賞で注目された「ルーム」と「スポットライト」を観てきました。「ルーム」は、アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説を基に、7年間監禁されていた女性と部屋しか知らないで育った子どもが、見事に脱出を果たした後、壁の外側にあった世界での摩擦を乗り越えて適応してく過程を描いた作品です。主人公の女性を演じたブリー・ラーソンが、2015年度のアカデミー賞主演女優賞を獲得して話題になりました。彼女はもちろん素晴らしいですが、5歳の子ども役のジェイコブ・トレンブレイの放つ光彩がスゴいです。繊細で力強い作品に唸り、泣きました。
「スポットライト」は、神父たちによる少年少女たちへの性的虐待と、教会がその事実を数十年にわたって黙認し続けていたというカトリック協会のスキャンダルを暴いたボストン・グローブ社の活動を描いた、実話ドラマ。ご承知の通り、アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞し、現在、米国内はもちろん、ワールドワイドで評価が広がっています。
どちらも昨年秋、わずか数館から上映がスタートしましたが、現在、過去一年間の公開映画中、「ルーム」は113位、「スポットライト」は61位(1位は「スター・ウォーズ フォースの覚醒」)と、興行成績を伸ばしています。



ジャーナリズムに暖かいエールを贈った「スポットライト」 
「スポットライト」は、フロリダからやってきた新任の編集局長、Marty Baron(現在はワシントンポストのエグゼクティブ・エディター)が、小さなベタ記事に出ていたカトリック神父の児童虐待事件を深く掘り下げるよう、調査報道班に命じるところから始まります。記者たちは、カトリック教徒の読者に支えられ教会とのしがらみも深い同紙で、カトリック教会を敵に回すことができるだろうかと戸惑いながらも、事件に関わった弁護士や被害者の会を通じて被害者たちとの面会を重ねていきます。地道な取材で大きな確証がつかめたとき、2011年9月11日の同時多発テロが発生。他の要因も絡み、スポットライトでの報道は翌年1月まで持ち越されることになるのですが、事実を調査し確証を取り、原稿を仕上げ記事の載った新聞が配られるまでの、チームの動き、メンバーそれぞれの様々な葛藤が、しっかりと描写されています。事件を追うサスペンスというより、淡々とじっくりと、記者・編集者のチームをクローズアップしたヒューマンドラマと言えるでしょう。ボストン グローブ社の調査報道班は、2001年に調査を始めてこの事件の実態と証拠を綿密に把み、2002年年初から紙面での報道を続け、2003年にピューリッツァー賞を受賞。ボストンや米国内だけでなく世界中で起きていた問題を白日のもとに晒し、大きな貢献をしました。



マスコミのスクープを描いた映画で有名なのは、ウォーターゲート事件を基にロバートレッドフォードとダスティン・ホフマンが主演した「大統領の陰謀」でしょう。この映画がアカデミー賞を受賞してから40年近く経ちますが、その間、メディア環境は大きく変わりました。ボストン・グローブの発行部数は現在、20万部程度にまで減少し、NYタイムズの子会社となった後、数年前、球団に売却されたと聞いています。苦戦が続く米国の新聞業界にとって本映画のオスカー受賞は明るいニュースとなったようです。「”スポットライト”のオスカー受賞はボストン・グローブ社とジャーナリズムへの暖かいエール」、「嬉しいカンフル剤」等など、絶賛の評が多数見られます。
実際、マスコミが題材の作品だけでなく、映画には新聞社やテレビ、テレビのキャスター等が度々登場しますが、私の知る限り、その多くがハイエナのような存在とされていたり、あるいは揶揄の対象だったり…。「ルーム」でも、脱出した主人公たちの家の周りにはマスコミが押しかけ、ワイドショーのインタビューをきっかけに女性はさらに傷を負うことになります。ジャーナリズムを、その本質的な課題も織り交ぜながら、自然に好意的に伝えた「スポットライト」は、とても新鮮でした。ただ、個人的には、この映画の魅力は、ジャーナリズムの真髄に改めて光を当てたこと以上に、チームワークやリーダーシップとは何かということを、表面的な「言葉の力」で押し付けるのではなく感じさせてくれたことにあると思います。さすが、「扉をたたく人」のトム・マッカーシー監督。そして、マイケル・キートン、スタンリー・トゥッチ、リーブ・シュライバー等々の俳優陣の抑えた演技が絶妙です。(穂)


   
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